「君へ」 ~一冊から始まる物語~
授業後という事はまだ15分も経っていない。
走れば間に合うはずだと思いながら必死に足を動かした。
駅まで数100mと言うところで今にも倒れそうな唯都を見つけた。
「あっ!!」
唯都は限界が来たみたいで地面に倒れ込みそうだったが、間一髪支えることが出来た。
「大丈夫?唯都。」
意識が朦朧としているみたいで返事が来なかった。
おデコに手を置くと
「あっつ!!!!」
まるで熱いやかんを触ったときのようだった。
「唯都!唯都!」
私は必死に呼びかけたが返事はやっぱり来なかった。
周りに人が寄ってきて、駅員さんとたまたま通りかかった夛成来先輩が唯都を駅の医務室まで運ぶのを手伝ってくれた。
私は一旦夛成来先輩に唯都をお願いして、都兄に電話した。
「もしもし都兄???」
『どうしたんだそんな慌てて。ほら落ちついて。』
「唯都が凄い高熱出しちゃって迎えに来れない?」
『唯都が熱?!わかったすぐ行く!!』
都兄は車の免許を持っているのですぐ家まで帰れそうだった。