こんにちは、頭蓋さん。



映画なんて高校時代に行ったっきり記憶がない。部屋にテレビすら無いものだから、この二ヶ月映画を一つも見ていない。



「……なに観るんだろう」



特に観たいものはないからチケットの手配などは頭蓋さんに任せていた。

こてこての恋愛ものだったら開始2分から寝るだろうな。


天気は快晴。雨だったらその辺の本屋で待ち合わせようと思っていたのに、神は頭蓋さんに味方したようで。

彼の希望通り、若者の待ち合わせによく使われる時計広場に来ることになった。


なんでこんな、わーわーきゃっきゃ言ってるカップルがいる場所に来ないといけないんだろう。


ケータイを弄りながらそこらにいるカップルを観察。みんなデートだろう、洋服も髪もとてもおしゃれだ。


その脳を分けて欲しいなーなんて思いながら見つめていた時。



「あれ、桐島?」



聞き慣れた明るい声が届いた。


ケータイから顔をあげれば、正面から走ってくる笑顔のチャラい男。菓だ。

黒を基調とした服装に金のネックレス。チャラい、とことん極めている。

存在がうざい。


あからさまに嫌な顔をしている私に気付いているのかいないのか、菓はニカッと笑うと陽気に話しかけてきた。



「桐島誰かと待ち合わせ?友達いないのに誰と?」



否定できないのが辛い。


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