偽りの花嫁
18歳の誕生日

朝食を終えた旦那様の部屋へ訪問する為に、私は一度制服からお屋敷用の洋服へと着替えさせられた。私は使用人のはずなのに何故か私の身支度を手伝ってくれる使用人がいる。


その彼女のお蔭で私はこの屋敷のマナーやルールを知らなくても教えてもらいながら過ごすことが出来る。


「出来ましたよ。碧さん、素敵な洋服ですわ」


彼女が着せてくれた洋服はこれまでのモノとは段違いで高価な服だと素人の私でも分かる。とても肌触りが良くて私の体型に合ってとても動きやすい。シンプルなデザインではあるけれどとても品が良くてまるでどこかのお屋敷のお嬢様のようだ。


「旦那様がお待ちですよ。急ぎましょう」

「はい」


身支度を整えられ旦那様のお部屋へと急いだ。毎朝のコーヒーとお休みになる前の紅茶を淹れるのが私の仕事だ。それ以外の時間にこの部屋を訪れたことは一度もない。


この2年間と言う長い期間をこの屋敷で奉公したけれど、こんな時間に旦那様の部屋を訪問するのは初めての事でかなり緊張で手に汗をかいてしまう。


そして、毎朝している事と同じ様に旦那様の部屋の前まで来ると一度立ち止まり深呼吸をし身なりを確認する。


心を静めたらドアを軽くトントンと叩き旦那様の返事を待つことになる。


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