偽りの花嫁

「入れ」


旦那様の言葉が聞こえてくると静かにドアを開け一礼するとドアを静かに閉める。毎朝と同じことを繰り返す。そして、旦那様からのお言葉を頂くまで頭を下げていることだ。


「こっちへ来い」

「はい」


いよいよ、旦那様からのお言葉を頂ける。私は18歳の誕生日に解放される。この瞬間をどれだけ待っていたことか。私にも他の人のような生活が待っているのだろうか? 素敵な出会いがあるのだろうか? そんなことをつい考えてしまった。


旦那様は着替えの途中だったのかスーツの上着はまだ着ておらずシャツのボタンを留めている所だった。お着替え中に失礼なことをしたのだと、ここは一度下がるべきかと悩んでいた。


すると、旦那様は私の前まで来ると腕を差し出した。


「ボタンを留めろ」

「は・・・はい」


左腕の袖のボタンが外れたままだったのを留めさせられた。左側のボタンを留めると次は右腕の袖を突きだした。両袖のボタンを留め終わると、旦那様はフッとまた笑っていた。


今朝は機嫌がいいのか悪いのかよく分からない人だと悩んでしまう。旦那様のご機嫌一つで私の生活が変わるのだから、つい旦那様の反応一つでビクビクしてしまう。


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