偽りの花嫁

「文句言いたげな表情をしているな」


ベッドに置いていた上着を羽織るとネクタイを締め直しながら私を睨む様に見つめた。旦那様のその恐ろしいまでの瞳はこれまでに見たことがないと言えるだろう。


私は何か間違ったのだろうか? 旦那様を怒らせるようなことをしてしまったのだろうか?


旦那様は何を思って私に縁談を突きつけるのか。


「あの、何故、私が婚約しなければならないのでしょうか?」

「既に決まっていた。お前は18歳の誕生日を迎えると結婚すると。だが、それではあまりにもお前が可哀想だろう? だから、せめて卒業してから結婚式を挙げてはどうかと思っていたんだ」


私が可哀想? 本気でそう思うのならばこの縁談そのものをご破算にして欲しい。そう願う権利は私にはないのだろうか?


だけど、私の口からそれを言う資格はないのだろう。


私は旦那様に買われた使用人なのだから。


どこの誰とも知らない人と結婚しなければならない事こそ「可哀想」ではないのか?と旦那様に問いたい。18歳で結婚する以上に誰とも知らない人との結婚が哀れとは旦那様は思わないのだろうか。


< 14 / 17 >

この作品をシェア

pagetop