デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
目を開けた。

いや、桜の部屋で返事を聞いたときから、分かっていた。

もうあきらめるしかない、桜の心は変わらないと。

そんな芯の強さが、一番好きだから。

俺はバカだからな。

分かってたのに、足掻いてみたかった。捕らえられて、王に処刑されてもいいから、桜を手に入れる夢を叶えたかった。

そのくらい欲しい女だったから。

フッと今度は苦笑いをして、あの時のように、また自分のマントをそっと桜の裸の背中にかけた。

「………ほんと、反則だよ、お前」

穏やかさを取り戻したシュリの声に、桜は顔を上げた。

「芯から惚れてる女に、『嫌いにさせないで』なんて言われて、無下に出来る奴がいるわけねえだろ」

そう言って、マント越しにぎゅっと抱きしめる。

「シュリさん……」

「……今だけ」

黒髪に頬を寄せ、目を閉じた。

「これが最後だ。そしたら……俺はお前の思い出になるから」

彼女の髪の匂いが、そっと香る。

『本当の優しさ』を手に入れなさいと言った、遠い日の母の匂いに似ていると思った。
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