デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
つい、とそっぽを向いた。

(酔えるものか。こんな……こんな状況で)

さっさと手酌でまた別の酒を注ぐ。

そして、甘い酒をまたこくこくと飲む少女を、目線だけで見つめる。

空になった桜のグラスを見て、「何か飲むか」と声をかけたが。

「ううん……お酒はこれでやめときます。これ以上飲んだらフラフラになるかも」

少し染まった顔をほころばせて、頭を横に振った。

「あまり強くないな、そなた」

王が笑うと、またふわんとした微笑みを向けて言う。

「うん、だから、前カナンには『もう危ないから酒飲むな』って言われちゃいました」

「…………」

「シュリさんはすごく飲んでたなあ。あっという間に一瓶空けちゃって。武官さんて豪快ですよねえ。でもすごい酔ってても、乗馬がすごく上手で」

アルコールの力でにこにこする桜は、いつになくよく話す。
ゆっくりとグラスを口に運びながら自分を見据える、紫の瞳の表情にも気づかず。

「あとね王様、アスナイさんがすごくお酒強いんですよ。全ー然顔色変わらなかったの。でね……」

その時、アスナイに、あの居酒屋のソファでされた事を思い出して、あわてて口をつぐんで思わずポッと頬を染めた。

すると次の瞬間、頭が引き寄せられ、唇が重ねられた。
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