デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
ゆっくりと、長い黒髪をすく。

自分の胸の中で、まだ彼女の上がっている息を小さく感じながら、そのしっとりと汗ばんだ額に唇を当てた。

その白い肩が上下するのを見ていると、また幸福感が胸にあふれた。

「……桜」

「は…い」

熱のまだ冷め切らない、とろんとした瞳で見上げるその顔は、わずかにまだ赤い。

あんなに啼かせて、あんなに繋がったのに。

彼女の奥深く、どこまでも熱くて柔らかくて、狂おしいほどの官能に、幾度も意識が白くなった。

初めて肌を合わせる彼女への気遣いも、全て頭から飛んでしまうほど。

それなのに……。

「………もっと」

足りない。もっと、ずっと欲しくなっている。

こんなに満足しても。いやだからこそ余計に。

「え?」

聞こえなかったのか、桜が聞き返した。

「いや……」

腰に這わせた手が、あわてて優しくなでる動作を始めた。

ダメだ、無理をさせては……。

知ってしまった彼女の味をまた貪りたいという、強い欲望をくっと唇を噛んで抑えた。
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