デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
食事が終わったあとも、桜は首をひねっていた。

(王様を喜ばしたいけど、どうすればいいの……って、それを素直に聞けって言われたけど……そんなひねりがなくていいのかな?)

ルネの意図する所が分からず考え込んでいると。

戸が叩かれた。

「あ、……はい」

「失礼いたします」

少し低めの声とともに、アラエが姿を見せた。

桜を一瞬見たが、すぐに微笑みを貼り付けて目をそらす。

「我が君がお召です。ご案内いたします」

「あ、はい……」

どきっと跳ねる胸を押さえて、てくてくとアラエのもとへ。

「………」

「?」

数秒アラエに見つめられ、首をかしげたが、彼はさっさと先に渡り廊下へ。

(……いつも通りだ)

まるで昨日、主君の部屋に泊まったのが嘘みたいに。

いや……もしかしたら泊まらなかったのかも。

明らかに男慣れしていなさそうだし、何よりいつもの清らかで優しい雰囲気は全く変わっていない。

知らず、自分に都合のいい思い込みをしようとして、アラエはそっと後ろから小走りでついてきた少女を見る。
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