デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
桜の心中など王はわからずに、馬上で愛おしそうに後ろから抱いた。

「待ち長かった……。神児とは充分に話せたか」

「ええ……」

「そうか。神力も問題なく回復したようだ。お前も帰ってきたし……安心した」

優しく言い、また微笑む。

前に座る桜が、その言葉に悲しげに顔を曇らせているとも知らずに。

「女の身になったそうだな、神児は。二代続けての女の神児だ」

「ええ……すごく美人でしたよ」

桜が少し笑って答える。

「代々、神児は優れた容姿で生まれてくるからな。この世の神の代弁者だ、まぁ当然と言えば当然。あれの母も、祖父も、そのまた前の神児も、たいそう美しかった」

「そうなんですか」

「ああ。近いうちに、あれの夫となる者が選ばれて、神宮に迎えられようよ」

王がうなずいた。

「優しい人が来てくれればいいな」

「その辺りは心配いらぬさ。歴代、皆穏やかな生涯を送っている」

そう言った後、少し意地悪な声音になる。

「だが、あれは落胆していたろう?何しろ、お前を娶る事が決して出来なくなったからな」
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