デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
ギクッとして思わず彼を振り仰ぐと、フフッと唇の片端を持ち上げている。

「そら見たことか。私の言った通りであったろう?神児の、お前への気持ちは」

むに、とその指を桜の頬に埋める。

「は、はい………」

もぐもぐと口ごもると、今度はクスクスという笑い声。

「ま、だがどちらにしろ、あれがお前を娶る事は出来なかったであろうがな」

「え?」

「知らなかったか?神児の伴侶となる者は、必ず純潔の身である事が必須」

「あ……」

そういえば。

頬に埋めたその指を、ゆっくりと彼女の唇へと。

「お前はもう、私のもの。誰にも盗まれはしない」

「……………」

どこか艶のあるその声を、桜は鞍をぎゅっと握りしめて聞いていた。


公宮の裏口につながる階段の下に着いて、馬を従者に託すと王は桜の手を取って階段を上り、渡り廊下へ。

歩きながら、少し弾んだ声音で言った。

「明日は、休みにした」

「……え?王様のお休みですか?」

聞き返す桜にうなずく。
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