デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
ビクリ、と王の紫色の瞳が揺れた。

「帰る?」

「え…はい」

当たり前の様にうなずく桜を、固まったようにただ見つめる。

「あ、でも帰るまでに、王様が満足されるまで私の世界のことはお話しますから。ちゃんと、精一杯のご恩返しは」

途中で、王の上げた手に桜の言葉はさえぎられた。

「大丈夫だ、分かっている。帰る方法か。…そうだな、私もできる事なら協力しよう」

なぜかまた波立つ心を押し殺して、桜に微笑んでみせた。

「ありがとうございます」

そんな事とは知らずに、桜もホッとしたような笑みを浮かべた。

「王様、じゃあ今日は私の世界の何をお話しましょうか」

気を取り直して、聞いてみる。

「………」
「王様?」

ハッとした表情の王に、桜は心配そうな目を向けた。

「大丈夫ですか」

「ああ…何だか今日は、政務の疲れが抜けるのが遅いらしい。すまぬが、続きは明日にしよう」

目をそらし、早口で告げる。

「あ、お疲れだったんですね。分かりました。じゃあ、戻りますね」

なるほどと納得して、桜は立ち上がった。
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