デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
「………?」
ぞくり、と悪寒がはしり、しゃがんでいたアスナイは後ろを振り返った。
だがそこには、荒らされた村と、広場に捕らえられた野盗の群れ、そして村人の保護と野盗の移送の手続きに追われる仲間たちが、変わらず走り回っていた。
一瞬首を傾げ、調合した傷薬やねんざの薬を住民に塗っていく。
跡は継がないが、技術だけは盗んでやろうと密かに決めて父親の元で修業したため、彼の医学の腕は軍医と遜色ない。
今日の野盗団は組織として完成されていて手強く、今まで皆休日返上でその掃討に当たっていた。
それがやっと実ったことで、アスナイも無事に12日後の休みにありつけそうだった。
今治療しているのは、小さな女の子だ。青い髪に青い目をしている。痛みをこらえて、ぷるぷると震えていた。
そっと腕に包帯を巻いて、「よし」と一言。
「ありがと、ごじゃます」
ペコンと小さな頭を下げ、舌足らずなお礼を言うその姿は、彼の一番会いたい少女に重なった。
母親の元によたよたと歩いていく後ろ姿をそっと見守って、黙々と治療を続けた。
ようやく街の宿舎に帰れるとなったのは、それから3時間後のことだった。
「アスナイ、簡易診療所は撤収できたか?」
二人の同僚が確認の見回りにやってきた。
「ああ。もういつでも出られるぞ」
頷くと、彼らはホッとして言った。
「やっぱお前がいるのといないのとでは違うな。この間街の医者を引っ張っていったら、腰が抜けて使い物にならなかった上、バカ高い請求が来た」
「ほー。なるほど。確かに医療行為は本来武官の範疇じゃないな。ハゲ薬を作ってやるから昇給させろとアホの上司に迫ってみるか。協力しないか?おごるぞ」
にやっと笑うアスナイに、二人はふふっ、と小さく笑った。
同僚の一人が、笑いを収めてアスナイに言った。
ぞくり、と悪寒がはしり、しゃがんでいたアスナイは後ろを振り返った。
だがそこには、荒らされた村と、広場に捕らえられた野盗の群れ、そして村人の保護と野盗の移送の手続きに追われる仲間たちが、変わらず走り回っていた。
一瞬首を傾げ、調合した傷薬やねんざの薬を住民に塗っていく。
跡は継がないが、技術だけは盗んでやろうと密かに決めて父親の元で修業したため、彼の医学の腕は軍医と遜色ない。
今日の野盗団は組織として完成されていて手強く、今まで皆休日返上でその掃討に当たっていた。
それがやっと実ったことで、アスナイも無事に12日後の休みにありつけそうだった。
今治療しているのは、小さな女の子だ。青い髪に青い目をしている。痛みをこらえて、ぷるぷると震えていた。
そっと腕に包帯を巻いて、「よし」と一言。
「ありがと、ごじゃます」
ペコンと小さな頭を下げ、舌足らずなお礼を言うその姿は、彼の一番会いたい少女に重なった。
母親の元によたよたと歩いていく後ろ姿をそっと見守って、黙々と治療を続けた。
ようやく街の宿舎に帰れるとなったのは、それから3時間後のことだった。
「アスナイ、簡易診療所は撤収できたか?」
二人の同僚が確認の見回りにやってきた。
「ああ。もういつでも出られるぞ」
頷くと、彼らはホッとして言った。
「やっぱお前がいるのといないのとでは違うな。この間街の医者を引っ張っていったら、腰が抜けて使い物にならなかった上、バカ高い請求が来た」
「ほー。なるほど。確かに医療行為は本来武官の範疇じゃないな。ハゲ薬を作ってやるから昇給させろとアホの上司に迫ってみるか。協力しないか?おごるぞ」
にやっと笑うアスナイに、二人はふふっ、と小さく笑った。
同僚の一人が、笑いを収めてアスナイに言った。