デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
カナンがいなくなったあと、桜は湯船に入って、シュリとアスナイの事を思いだしていた。

(もう赴任地に着いたよね…。元気かなあ)

今日、『魔』について教えてもらったからか、二人の身が少し心配になる。

(怪我とか、してないよね…また、会って話をしたいなあ)

二人とも忙しいし、友人も多くて女友達もきっと多いだろうから、自分のことなどそう思い出したりはしないだろうが、月に3回王宮にくる用事があるなら、少しは会えたりしないだろうか。

リア充だからなのか、ボディタッチが自分にとっては多くていちいち振り回されてしまうが、二人の安心感はほっとする。

そう思っていた。

カナンと敬語なしで喋れるようになったこと、王様をひっぱたいてしまったこと。

二人にとっては驚く話かもしれないが、残念なことにこのくらいしか桜には報告する話がない。

(あっ、そうだ)

元の世界に帰る方法を、探し始めたこと。

私が自分で何かをしていることが分かれば、二人も安心するかもしれない。

(王様も、協力してくれるって言ってたし…)

案外早く、それは見つかるかもしれない。

(あんまりこの世界に長居したら、帰るときにきっと寂しくなってしまうから、その方がいい)

ふう……と熱い息を吐く。湯殿から出て、少し早いが夜着に着替えた。

カラ、と格子状の障子を開けると庭が広がっていて、向こうに深宮が見える。
気持ちのいい風が吹いて、ほてった肌を冷ましていく。
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