デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
「……深宮、行ってみようかなあ」

初日にあれだけ興味を持ってくれた世界の話を断るなんて、よっぽど疲れてるのかもしれない。

「うーん、でも王様もごはんの時間かも…いきなり行っても大丈夫かなぁ」

許しがないと、いくら客人と言っても入れてくれないかも知れない。

ウロウロと考えた末、とりあえず入り口まで行ってみることにした。

夜着を脱ぎ、もう一度ワンピースを着る。

渡り廊下は一直線だから、迷うことはない。

早くしないと日没になるため、桜は早足で歩き出した。

池の水面に浮かぶ空は、紺色と青と、オレンジのグラデーションを映して美しい。

行き帰りはカナンと喋りながら歩いたため、短く感じたが、こうして一人で歩いてみると随分長い。

(王様は、毎日仕事場からこの廊下を通ってるんだよね…)

そんな事を思いながら、深宮の入り口にたどり着いた。

出入り口の扉は、やはり閉じられている。

しばらく迷ってから、そっとその戸を叩いてみた。

しんとして、反応がない。
< 341 / 1,338 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop