デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
―面倒な。

軽く心の中で舌打ちした。

肝心の桜がこれでは野営というわけにもいかない。

アスナイにとって、目の前の少女は『仕事』であり、主君に届ける『荷物』だった。

迅速に、丁寧に、完璧に。

それ以上でも以下でもない。

自分の身に代えても無事に送り届けるが、『情』もない。

任務遂行が遅れることは気に食わないが、仕方がない――。

『…宿に戻って、応急処置だな』

『おっ、じゃあ』

『一泊だけだ』

パッと笑顔になるシュリにしぶしぶ、アスナイは頷く。

そして、腰の小さなバッグから紙切れと鉛筆に似た筆記具を取り出して、サラサラと何かを書きだした。

『飯のついでに、これも買ってこい。手当に必要な薬だ』

一旦馬を降り、シュリの馬にアスナイが乗って桜の護衛をすることにした。

お使いに出ていく相棒の背中を見ながら、ぐったりとした桜の体を支えなおす。

その熱をマント越しに感じながら、アスナイはやれやれとため息をついた。

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