MIRACLE 雨の日の陽だまり~副社長との運命の再会~
「本当に日下さんには迷惑をかけてしまってすみませんでした。明日の朝にはアパートに戻ります」

 私がそう言うと、日下さんの眉間にわずかにシワが寄った。
 眉目秀麗な顔がキリリと歪む。日下さんが表情を変えるのは珍しい。

「ダメだ。荷物を取りに帰りたいというなら明日俺と一緒に行こう。あそこにはしばらく帰らないほうがいい。まだ犯人が逃げたままだから」

「……」

 その現実をつきつけられると、なにも言えなくなってしまった。
 犯人は未だに逃走中。もしかしたらあの近辺にまだいるかもしれない。

「最初から犯人は君を狙ってやったかもしれないって、警察も言ってただろ」

 たしかに警察でそう言われた。
 無言電話やほかの嫌がらせ等はないから、ストーカーではないのかもしれないが。
 無差別ではなく、私個人を狙った可能性もあるから気をつけるようにと助言されたのだ。
 なのにそんな恐ろしい場所に帰るのかと言われたら……気持ちが萎えてしまう。

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