MIRACLE 雨の日の陽だまり~副社長との運命の再会~
「海外でもっと自分を磨いて、我が社に入社してくれないか」

 それで恩返しになるのか? だったらお易い御用だ。

 父が死んでからより一層感情が欠落し、完全に無機質な人間になった俺だけれど。
 日下さんの前でだけは、普通の人間でいたいと思えた。
 日下さんが自分を心から必要としてくれるのなら、それに報いたい。

 無感情で無関心で無機質……それは、恋愛に関してもそうだった。
 俺は愛を信じていないし、女を信じていない。
 母が好きな男の為に家を出た、その事実を知ってから特に女は信じられなくなった。

 誰かと深い付き合いなんてしたくない。
 女の笑顔なんて嘘くさい。
 女に夢中になったところで、母のようにみんな去っていくんだろう?

 根底にそんな考えがある俺が、普通に純粋な恋愛なんてできるはずがない。
 
 女は不純でしたたかで、なにを考えているのかわからない。
 自分の都合で勝手なことをする生き物だ。
 こんな考えは歪んでると人は言うだろう。
 だが俺は、間違いなく母のことがトラウマになっている。

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