MIRACLE 雨の日の陽だまり~副社長との運命の再会~
 その日、私たちは別々に電車で帰った。
 送ってくれなかったせいで不審者につけられたわけではないのに、棚野さんはまるで自分を責めるように気にしてくれている。

「警察には行ったのか?」

 窪田さんが真剣な表情で尋ねた。冗談を口にしていた先ほどまでの顔は完全に消えてしまった。

「アパートの管理人さんには言いましたけど、警察にはまだです」

 なんとなくだけれど、わざわざ警察に言いに行くには決定的な事柄が足りない気がして二の足を踏んでいる。
 アパートの前で待ち伏せされているだとか、家に侵入されただとか、不審者が私自身を狙っている決定的な証拠が必要ではないのかな?
 だけどそれを今ここで言ったら、窪田さんからたっぷりお説教されそうだ。

「次になにあったら、絶対警察に行きますから」

 大丈夫だとたしなめると、窪田さんはまだまだ言い足りなさそうな顔をしながらも渋々言葉を飲み込んでくれた。
 こういうところは本当に兄貴気質で、困っている後輩を放ってはおけない性分の人なのだ。

「毎日は無理だけど、できるだけ俺が家まで送り届けるから。警察へ行くなら付き添ってあげる」

 棚野さんも心配そうな顔をしてそう言ってくれた。

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