十九時、駅前
「釣りはいらないっていったのに。
……えらい、えらい。
ちゃんとタクシーで帰ったな」

「……あの?」
 
何故か片桐課長は嬉しそうに笑うと、
……私のあたまを撫でた。

……って!子供じゃないんですから!

「ああ、うん。ま、いいや。もう仕事に戻れ」

「あの……」

「さっさと戻れ」

「……はい」
 
追っ払うように邪険に手を振られ、
渋々屋上を出る。
昨日といい、今日といい。
私には片桐課長が
なにをしたいのか全くわからない。

……ただ単に、
からかわれてるだけ、なんだろうか?
 

それから暫くは、
片桐課長が私に近づいてくることなく
過ぎていった。
というか、あれは一体なんだったのか、
未だにわからない。
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