十九時、駅前
わからないまま、忘れかけてた一週間後。
 
すっ。

視界の隅にスーツの袖をとらえて顔を上げると、
片桐課長の後ろ姿。
机の上には小さく折りたたまれたメモ。
軽くデジャビュを感じてしまう。
机の下に隠して広げる。

『笹岡へ
 十九時、駅前
     片桐』
 
あの日と同じ、片桐課長の几帳面な字。

……私が断るとか、考えないんだろうか?
 

終業後、いわれた時間に駅前に行くと、
やはり片桐課長はすでに待っていた。

「あの……」

「メシに行こう、メシに」

「……はい」
 
前回のことから、
この人になにか聞こうとしても
無駄なことは学習した。
たぶん今日も奢りだし。
なら、美味しい食事を楽しんだ方が、得。
 
< 13 / 92 >

この作品をシェア

pagetop