十九時、駅前
連れてこられたところは、中華のお店だった。
今日も飲み物から全部、
片桐課長が注文してくれる。
私はただ、曖昧な笑みで座ってるだけ。

前回の愚痴が
それなりに話題になったと思ったのか、
片桐課長は愚痴を中心に会社のことを話してた。

「……やっぱりこんな話は退屈、か?」
 
しゅん。

前回と同じ、捨てられた子犬の顔。
この顔されると、
私の体は勝手に首を横に振ってしまう。

「そうか!」
 
眩しいばかりの片桐課長の笑顔。
その顔にやっぱり心臓が大きく跳ねる。

店を出て、
前回と同じ手順を踏んでタクシー代を受け取り、
電車に乗った。
 

……はぁーっ。

一体なんなんだろう。
からかわれてるのかな、とか思う。
そう思っていても心臓の鼓動が何故か早い。

……でもきっと。これはお酒を飲んでるから。
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