ウサギの王子に見初められ。
「え? なんで笑うの」
肩を叩いたら、ふっと三上くんが顔を上げて素早くまた口づけてくる。強引ではないけど、頭の後ろに手をやって避けられない形にされる。
え、待って?
うろたえたて「いや」って声が出たけど自分じゃないみたいな甘えた声で、「大丈夫だよ」とかえってもっと甘いキスを誘っちゃったことがわかった。
身をよじるけど、本気で嫌がってないのが伝わるみたいで、「かわいい」と言いながらそっと床に押し倒される。
待って、やだ、嘘つき、と言い合いながら床でじゃれ合うみたいにキスが続く。
食べられちゃいそうに降り注いでいたキスがふと止まった瞬間に、目を上げた。
「待たなくても、いい?」
熱く見つめられて、小さく頷く。もう一度舌を絡めるようにキスした後、三上くんの顔が下がって首すじに埋まり、息遣いが耳に響く。
もしかしてこのまま?と覚悟した頃、お鍋がプシューとふきだすような音を立てて、二人でハッと我にかえった。
三上くんが慌てて身体を起こしてさらりと私の髪を撫でながら立ち上がり、キッチンに火を消しに行く。
私もおたおたと身体を起こして、今更赤くなる。予想外の展開なのに、予想外の三上くんなのに、なぜか自然に受け止めちゃってた。
女子っぽいとか草食とか言ってたの誰だ! 私か。
すぐに戻って来た三上くんは、床に座り直した私に屈みこんで、唇にチュッとキスをした。隣に座ってまたグラスを手に取ると飲み始める。
「ごめんね。襲わないって約束したのに、舞い上がったよね」
すっかりいつもの三上くんになって、照れてるみたい。でもさっきのあれ、なんか二人ともいつもの感じじゃなかったみたいで、私は急に普通に戻れないよ。
そんな思いを隠すように、なるべく普通にふるまう。
「食べないで飲んだらまた酔っ払っちゃうよ?」
「そしたらまた手繋いでね」
言いながら隣から手を重ねてくる。すっかりご機嫌だ。