恋の始まりは偽装結婚
 ウエディングドレスも、外のベンチに座っていたからお尻や裾が汚れてしまったかも。

 ビスチェタイプのウエディングドレスは母のもので、渡米するときに形見としてもってきたのだ。

 形は多少流行に遅れているけれど、母のドレスを着た私を祖母が見たら喜んでくれるはず。

 両親がいなかった母にこのウエディングドレスを用意してくれたのは祖母だったから。



 佐伯さんが牧師さまの案内で奥の部屋へ消えると、私は隅に置いていたバッグから化粧ポーチを取り出した。

 ルージュだけ塗り直し、髪に挿していたカスミ草のバランスを直していると、牧師さまが白バラを二輪手にしてやってきた。


「これをあのブーケから拝借しました。もう少し華やかな方がいいですよ」

「ありがとうございます」


 二輪の白バラを受け取ると、ある程度の長さに茎をカットして、カスミ草の中にそっと挿す。

 両方挿し終えて鏡を見ると、仕上がりに満足する。


「白バラのおかげで顔が明るく見えます。ありがとうございます」

「とてもキレイですよ。美男美女の結婚式を執り行えて光栄ですよ」

「えっ? 結婚式はしなくていいんです」


 牧師さまの言葉に驚いて、慌てて訂正する。


「これはミスター・サエキの案です。結婚式を挙げなかったら、おばあさまに会いに行っても薄っぺらい説明になるだろうから、と。これは予行練習だと思えばいいんです。神もわかってくれますよ」


 その方が演技も本格的になる。そう思って頷いたとき、奥のフィッティングルームから佐伯さんが出てきた。


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