恋の始まりは偽装結婚
 模擬結婚式でだいたいの雰囲気はわかってよかったと思う。これで祖母に最初から話してあげられる。


「牧師さま、写真をお願いします」

「そうでした」


 あらかじめ預けていたスマホを、牧師さまはポケットから取り出す。


「佐伯さん、写真をお願いします」

「もちろん」


 私たちは祭壇を背にして並ぶと、牧師さまにシャッターを切ってもらう。数枚撮ると、牧師さまが浮かない顔になる。


「どうかしましたか?」

 
 佐伯さんも牧師さまの様子に気がついたようで、私より先に尋ねる。


「いまひとつ、新婚カップルの雰囲気が写真に伝わってこないんですよ」


 スマホ画面で今撮った写真を見せられる。私も佐伯さんもうっすら微笑んでいて、なんら問題ない気がする。


「確かに……」


 牧師さまに同調したのは佐伯さんだった。


「そうでしょうか……ちゃんとした結婚式の写真になっていると思いますが……」


 私はこの写真でいいのではないかと思う。


「もう一度撮ってもらえますか? それと、この携帯でもお願いします」


 佐伯さんは自分のスマホを牧師さまに手渡す。


「佐伯さんの携帯で撮らなくてもいいんじゃないでしょうか?」

「千ドルがまだだからな。証拠写真だ。後でしらを切られないようにな」

「そんなことしませんっ! ちゃんと払いますから」


 冗談交じりの声色だったけれど、信用されていないのだと思うと、ため息が出そうになる。


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