スノウ・ファントム


それなら、本当の恋ってどんなものなんだろう。

私は、葉村くんのことが好きなんだと、周囲に知られないようにしながらも、自覚している。

その思いは、果たして、本物?

ルカが私を想ってくれているように切実に、真剣に。

私は、心から葉村くんを想っているのだろうか。







葉村くんとは、最初はごく普通のクラスメイトだった。

でも、一年生の夏ごろ、偶然図書室で私が好きな小説を彼も借りていたのを見て、『もしかして本の趣味が似ているのかな』となんとなく気になった。

それから、その一冊に限らず、毎朝ホームルームの前にもうけられている十分読書の時間に彼が読んでいる本は、以前私が読んだことのある本だったり、または読みたいと思っていたものだったり。

きっと他人から見たらささいなきっかけなのだろうけど、それから葉村くんを目で追うようになって、二年生でも同じクラスになれた時は、胸にじわっと嬉しさがこみ上げた。

とはいえ会話をしたのはほんの二、三度で、クラスメイトとしての必要最低限の話しかしたことはないけれど、私は変な風に緊張して、うまく話せなかったのを覚えている。

彼を見つめるだけの毎日だって私にとっては楽しくて、長い夏休みに入ってしまうととにかく憂鬱で、二学期が待ち遠しかった。


……だけど。

いざ夏休みが明けて二学期が始まると、葉村くんの様子がどこかおかしくなっていた。


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