スノウ・ファントム
次の日は晴れていたけど、畑や木や、建物の屋根の上には少しだけ雪が積もっていて、とても寒い朝だった。
地元の駅のホームで、マフラーをぐるぐる巻きにしてぼんやり立っていた私の隣に、またしても突然あの男の子が現れた。
「おはよう、キナコ」
暗くて雪まで降っていた昨日でも美少年だとは思っていたけど、朝陽に照らされたルカが眩しくてカッコよくて、ドキッと胸が鳴った。
ルカも地元はこの辺りなのだろうか。
「お……おはよう」
平静を装って挨拶をし、なんとなくルカから目をそらすと、改札のある二階から階段を降りてくる葉村くんの姿を見つけた。
けれど彼のほうは暗く濁った瞳で自分の足元ばかり見ていて、私の姿になんか気づかない。
(葉村くん、今日も、元気ない……。学校行っても、つらいことばっかりだもんね……)
ツキン、と胸に痛みが走り、真下の黄色い点字ブロックに視線を落とす。そんな私の姿を見て、ルカが探るように聞いてきた。
「……つらいことって?」
「それは、ルカに言っても、しょうがな……」
そこまで言いかけて、今のルカの発言がおかしいことに気づく。
(私いま、葉村くんのこと、口に出してないよね……?)