素敵な夜はあなたと・・・

 何かして欲しいとは思っていないが、ただ、クリスマスの様なイベントを一緒に楽しんでくれたら良いのにと思っていただけに優也の態度を残念に感じてしまう。


「茜、もうすぐ迎えの車が来るんだろ?」


 斎藤に言われて気付いた茜が時計を見ると既に迎えの車が来ている時間になっていた。車の送迎は雨風関係なく帰れるのは助かるが、友達と放課後に井戸端会議ができないのが寂しかった。

 友達みんなが全て車での送迎ではないので、たまには友達と一緒に歩いて帰りたいとも思っていた茜だが、きっと、それを優也に頼んでも許してはくれないだろうと諦めていた。

 以前も、それで優也を怒らせたことがあった。それを思い出すと尚更の事だ。


「運転手が居るのも面倒だな」

「しょうがないよ。お祖父ちゃん煩いんだから。」

「舞阪の一人娘だからね。誘拐でもされたら大変だよ。」


 茜はこんなに自由がなかったのならば舞阪の家の娘に生まれて来なければ良かったと、そんな愚痴を言いたくなってしまった。

 大きな溜息を吐くと茜は友達に手を振って教室を後にした。



「茜も大変だね。」

「そう言えば、毎日送迎しているあの男の人って誰だろう?」

「運転手じゃねえの?」

「そうは見えないよ。」

「ね?」

「だよね」


 茜のクライスメイトたちの会話に何気に耳を傾けていた斎藤。どうやら斎藤は優也の存在が気になるようだ。

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