素敵な夜はあなたと・・・

「ごめんね、遅くなって。」


 慌てて車に乗り込んだ茜はかなり優也を待たせていたようだ。茜を見る優也の瞳は冷ややかで機嫌があまり良くない。いつもは茜には優しい笑顔で「お帰り」と言ってくれるのに、今日は目を細めたまま無言でハンドルを握り締めていた。

 何かあったのだろうか?と、優也の顔を見ていたが、優也は茜に気付いても知らぬ顔をしていた。



「遅れてごめんなさい」

「遅れる時は今度からちゃんと連絡入れなさい」

「はい」


 優也の厳しい声に茜はますます凹みが酷くなりそうだった。優也との会話を他人が聞いたらどう思うのだろうと、茜はこれまでの優也の言葉遣いを思い返していた。

 とても優しく話す優也だが、お姫様扱いをする時もあれば子ども扱いをする時もある。茜を一人の女性として扱ったことは一度もない。

 それを考えれば茜は優也に妻として一緒に住んでいると思われていないのだろうかと思った。

 それともまだ高校生だから茜のことを大事に考えて手を出さないでいるのだろうかとも思った。もし、そうならば嬉しいが、もし、そうでないならば茜はどうすれば良いのだろうかと悩みは尽きそうになかった。


 優也の態度が気になる茜は横目で優也の表情を窺っていた。チラチラと様子を見る茜に優也は鬱陶しさを感じてしまった。


「何か言いたいことがあるならはっきり言いなさい。」

「いえ・・・ないです。」


 優也は相当機嫌が悪いのだと思うと茜はソッポを向いて窓から外を眺めていた。

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