素敵な夜はあなたと・・・
優也の裏切り

 茜が玄関からこっそり家の中へと入って行くと、中から男女の話し声が聞こえて来た。それも、言い争っている様な声だ。

 しっかり聞き耳を立てているとその声が、母親の美佐の声と優也の声だという事がわかる。

 玄関前に停まっていた優也の車と同じ様な車は優也のものだった。優也は今日は仕事で遅くなるからと家を出たはずなのに何故ここへ来ているのだろうかと疑問に思えた。

 会長命令でも下ったのだろうかと茜は心臓をドキドキさせながら二人の会話を聞いていた。すると、驚くような会話が茜の耳へと飛び込んで来た。



「光一さんと離婚が成立したのなら、もう障害はないだろう? 何故拒む必要があるんだ?」

「あなたは茜と結婚したのよ。何を考えているの?」

「あれは形式的なもので本物の夫婦じゃない。それは君だって分かっているだろう?それとも、あの杉浦との見合いを喜んで受けるとでも言うのか?君はあの杉浦の方が良いのか?」

「それとこれとは話が別だわ」

「俺は君と結婚する為に会長にここまで育てて貰ったんだ。その恩義を忘れることも出来ないし君も忘れることは出来ない。」


 茜はあまりの驚きに声にもならなかった。そして、震える体は立っているのも辛く身動きが出来ない。あまりのショックに茜はこれは夢でも見ているのかと思えてならなかった。

 そして、ドアの隙間から見えた優也と美佐を見て更にショックを受けてしまった。

< 111 / 174 >

この作品をシェア

pagetop