素敵な夜はあなたと・・・

 クリスマスイブの夜、一人で過ごした茜は何も手につかなかった。食べる気力もなくただ自分の部屋のベッドでごろ寝をしていた。

 何度も時計を見るが優也は帰ってこない。深夜遅くなっても優也の姿はマンションのどこにもない。茜はリビングへと行くと、誰もいない一人だけの寂しいリビングに悲しくなって涙が流れてしまった。


「やだ・・・どうせ政略結婚の相手なんだから、こんなのどうでもいいじゃない。」


 自分にそう言い聞かせたものの母親と夫のあの現場を見れば痛む胸はますます痛みは深くなる。


「何でお母さんなの?!」


 茜はリビングの先に見える優也の部屋のドアを見つめていた。あのドアの向こうの部屋へは一度も入ったことがなかった。どんな部屋だろうかと茜は気になってドアを開けて中へと入って行った。


「うそ・・・・」



 あまりの驚きに両手で顔を覆ってしまった。優也の部屋はベッドが置かれているだけの何もない部屋だった。テーブルも椅子もなくソファーも何もなくただ眠るだけの部屋だった。

 茜はクローゼットの中がどうなっているのだろうかとその扉も開けて見た。そこには仕事用のスーツと室内着が数着あるくらいでそこもがら空き状態だった。

 優也がここに長く住むつもりはないと言わんばかりの部屋だった。


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