素敵な夜はあなたと・・・
「お祖父ちゃん、私ね、離婚したいの。」
「黒木が何かしたのか? それとも何か言われたのか?!」
「ううん。優也さんはとても優しくて良い人よ。だけど、私がどうしてもダメなの。やっぱり、まだ結婚は早すぎて学校だってあるし大学だって行きたいし、今のままじゃそんなの無理でしょう?」
茜は優也と美佐との関係を言うつもりはなかった。それよりは自分の進路の為に優也は邪魔だと言った方がまだマシだと思ったのだ。
「学校へ行っても結婚生活は出来るだろう?」
「ううん。両立は無理。私はそんなに器用じゃないから。どちらか一つじゃないと出来ないの。お願い。お祖父ちゃん。私はもっと好きな事したいの。もっと自由になりたい。」
「しかしだね。黒木は後々会社を動かす人間だよ。その人材を手放すことは出来ないんだ。茜、もしかして誰か好きな男でもいるのか?」
「い・・・いないわよ。」
茜は慌てて否定したが、この時何故か優也の顔が頭に浮かんでしまった。何故、あんな男の顔が浮かぶのかと自分でも信じられなかった。
戸惑いを隠せない茜の表情を祖父はジッと見つめていた。しかし。茜の頑固さは良く知っている。それに、美佐とは違い男に走るような様子は見当たらないと感じた祖父は茜に提案をした。
「離婚はさせられないが別居なら許そう。但し、条件がある。」
「条件?」
「そうだ。お前が高校を卒業したらまた夫婦一緒に暮らすこと。そして、今度こそ二人の間に子どもを儲けることだ。」
茜は祖父の言葉に「はい」とは言えなかった。