素敵な夜はあなたと・・・
「茜?!!」
「元気そうね。」
「今、どこにいるんだ?!」
久しぶりの声に優也は嬉しさのあまり茜に会いたくなっていた。会いたい衝動を隠せない優也は茜の引っ越し先を知りたかったが誰も教えてはくれなかった。
いつもそうだった。優也は夫であっても茜については何も教えては貰えなかった。そして今もそうだ。優也は茜を取り戻したいと思っていてもそのチャンスも与えられない。
「さっきねお祖父ちゃんから連絡が入ったの。それで私から話すからお祖父ちゃんからは連絡しなくてもいいって言っておいたわ。」
「会長から?」
「私達の離婚が成立したのよ。これで、もう気兼ねなく優也さんは好きな人と結婚出来るわよ。」
茜の明るい声に優也は離婚がそれ程嬉しかったのかと言葉にならなかった。今までで一番明るい声ではないだろうかとさえ思えた。それくらい久しぶりに聞いた茜の声は弾んでいる声だった。
「ねえ、今度こそは優也さんは幸せな結婚してよ。」
それだけ言うと茜は電話を切った。
家の近くを流れる川を散歩中の茜はその川を見ながら携帯電話を思いっきり川へと投げ込んだ。
「私も幸せな結婚出来るように頑張るから! さあ、頑張るぞ!」
未来へ向かって歩きはじめるしかないと茜は明るい未来を期待していた。
そんな茜とは対照的に、切られた電話を何時までも眺めていた優也はポツリと呟いた。
「茜を手放したくなかった。」と。
空を見上げた優也の目から涙が流れていた。


