クールなCEOと社内政略結婚!?
「あのドレスは私がデザインしたものよ。あなたたちふたり以外はみんなそう思ってるわ」

「周りがどう思おうとも、あれはあさ美がデザインした。それは間違いない事実だ」

 しかし孝文の毅然とした態度にも、雅さんはまったくひるむことがなかった。

「そう、でもそれを証明することはできないわよね。それとも社長さん自身がただの平社員の無実を証明するつもりかしら? でもそんなことしたら、ふたりの関係が社内にバレてしまわない? そうなると宗次さんはこの会社では働けなくなるわよね。あなたの性格なら、周囲に気を遣われて腫れ物扱いされるのは我慢できないでしょう?」

 雅さんの言うとおりだ、私がそういうつもりがなくても私は社長夫人となる。そうなれば今まで通りの扱いはされなくなるだろう。私がアナスタシアで“ただの”デザイナーという立場でいることは難しくなる。

 悔しい気持ちを我慢するために私は拳を握り、感情を抑えた。

 しかし孝文は雅さんの言葉にも冷静に、懐から一枚の紙を取り出した。

「これを見てくれ。これはとある社員が採用試験の時に提出した課題だ」

 その言葉を聞いて、私はハッとした。

 手渡された紙を開いて見た雅さんも驚いた顔をした。

「これはあさ美の提出書類だ。入社時にあのデザインの原型をすでに描いていた。ところどころ改良はされているが、このデザインは間違いなくあさ美が、お前よりも先に描いた証拠になる」

 雅さんがうろたえた表情を見せた。紙を握る手に力が込められて皺になる。それに孝文が追い打ちをかけた。
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