クールなCEOと社内政略結婚!?
「事実でもなんでも、仕事がやりにくくなるのは困るんですっ! 社長だって、変な噂流されたら困るでしょう?」

「別に困らん。事実だからな」

 あぁ、私の気持ちを理解してもらおうと思ったこと自体が間違いだった。ここは大人しくした手に出るしかない。

「私は困るんです。お願いですから結婚のことは周囲には黙っておいてください」

 両手を合わせて頭を下げる。弱みを掴もうと思った矢先、逆に相手に弱みをさらけ出してしまうなんて……しかし背に腹はかえられない。

「どうしてもって言うなら、聞かないわけもないけどなぁ」

「本当ですかっ!?」

 もったいつけた言い方が気になったけれど、嬉さで顔を上げ相手の顔を見て、ぬか喜びだったと後悔する。私の目の前にある男の顔はあきらかに何かをたくらんでいた。

「もちろんタダじゃない。条件がある」

 その言葉を聞いてがっくりと肩を落とす。本当に抜け目のない男だ。

「なんですか? 条件って」

 どうせその条件をのむしか、私には道がないのだ。だったらさっさと聞いてしまいたい。

「ひとつ、敬語をやめること」

「ひとつって……ふたつ目もあるんですか?」

 目の前の男が人の悪い顔でうなずく。

「ふたつめは、俺を〝孝文〟って呼ぶこと。家でまで社長なんて呼ばれたくない」

「え? そんな簡単なことでいいんですか?」

 私の言葉に、無言で鋭い視線が返ってきた。

 あ……敬語使っちゃった。
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