クールなCEOと社内政略結婚!?
簡単とは言ったものの、今まで社長としか見てなかった相手をいきなり呼び捨てにして、敬語も使わないというのは結構難しいのではないかと思う。
「できないなら、社内報に載せるまでだな。社長の結婚相手は……」
「ダメで……じゃなくて、絶対だめっ!」
またもや失敗しそうになって、あわてて自分の口を押さえた。そんな私を見て満足そうに笑った後、席を立ち私の座る真横に立つ。
「ほら、次は名前だ。呼んでみろ」
覗き込むように身をかがめた彼の顔がやけに近い。意識して戸惑う私を見て、面白がっているのがわかり悔しくなる。
敬語の方は、脳内ではとっくの昔に使っていないからどうにかなるとして、問題は名前だ。いきなり社長を呼び捨てにするなんて、やっぱり気が引ける。
「た、孝文……」
いつもの十分の一くらいの大きさしか声が出なくて自分でもびっくりした。どうして名前を呼ぶだけなのに、こんなに緊張してしまうんだろうか?
「まぁ、合格だな」
「合格って……」
「敬意を込めてくれるなら、〝孝文さん〟でもいいけど」
しつこくからかってくる相手を私は睨みつけた。
「遅れるよ。孝文」
これ以上いいようにされてたまるものか。
私は立ち上がると、彼の背中を玄関まで押した。
「まだ、コーヒー全部飲んでない」
「もう冷めたので、会社で飲んで」
ああいえば、こう言う。会話の応酬を玄関まで繰り返す。高そうなピカピカに磨かれた靴を履いた孝文がこちらを振り向いた。
「できないなら、社内報に載せるまでだな。社長の結婚相手は……」
「ダメで……じゃなくて、絶対だめっ!」
またもや失敗しそうになって、あわてて自分の口を押さえた。そんな私を見て満足そうに笑った後、席を立ち私の座る真横に立つ。
「ほら、次は名前だ。呼んでみろ」
覗き込むように身をかがめた彼の顔がやけに近い。意識して戸惑う私を見て、面白がっているのがわかり悔しくなる。
敬語の方は、脳内ではとっくの昔に使っていないからどうにかなるとして、問題は名前だ。いきなり社長を呼び捨てにするなんて、やっぱり気が引ける。
「た、孝文……」
いつもの十分の一くらいの大きさしか声が出なくて自分でもびっくりした。どうして名前を呼ぶだけなのに、こんなに緊張してしまうんだろうか?
「まぁ、合格だな」
「合格って……」
「敬意を込めてくれるなら、〝孝文さん〟でもいいけど」
しつこくからかってくる相手を私は睨みつけた。
「遅れるよ。孝文」
これ以上いいようにされてたまるものか。
私は立ち上がると、彼の背中を玄関まで押した。
「まだ、コーヒー全部飲んでない」
「もう冷めたので、会社で飲んで」
ああいえば、こう言う。会話の応酬を玄関まで繰り返す。高そうなピカピカに磨かれた靴を履いた孝文がこちらを振り向いた。