クールなCEOと社内政略結婚!?
「それって、どこの店舗でも完売で、本社にもサンプルしか残ってないって聞いたんだけど」

 おそらくそのサンプルが今、私が身に着けているものだろう。

「あれ、えーっとあの」

 変な汗が滲み出てくる。なんとか、取り繕わなくては。

「あのね、あぁ……実はネットオークションで見てどうしても欲しくて落札したんだよね」

「えー! いくらぐらいの値がついていたんですか?」

 アナスタシアの洋服はネットオークションで高値で取引される。しかも完売して追加生産がないと発表しているこのワンピースなら結構な高値がつくはずだ。

「えーっと、いくらだったかな……」

 本来、バカ正直で通っている私は、こういうときにめっぽう弱い。

 どうしたらいいのか考えていると、助け舟のように目の前の電話が鳴った。

「ゴメン……また後で」

 私は梨花ちゃんに断ると、目の前の電話を取った。

「はい。アナスタシアデザイン部、宗次です」

 そうだ、戸籍上はどうであれ、ここでは『宗次』のままだ。私生活はしっちゃかめっちゃかだけど、そんなものに振り回されずに、いつも通り仕事をしないと。

 何よりも――自分の結婚よりも――ここで仕事をすることを選んだのだから、しっかりしないと。

 私は電話の相手の話を聞きながら、決意を新たにしていた。
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