コクリバ 【完】
先輩はカウンターの中に入って、お皿に綺麗にガトーショコラを盛り付けている。
「先輩。転職するんですか?」
「はは…それもいいな」
「そのエプロンは自前ですか?」
「そんな訳ないだろ。マスターに借りたんだよ」
「そうなんだよ。俺より似合ってるのがムカツクだろ?」
マスターがそう言いながら珈琲を置くと、私の隣りの席に座った。
「奈々ちゃん。こいつね、さっきまでウエイターやってたんだよ。客の女の子にキャーキャー言われてさ」
「マスター!余計なこと言うなよ」
「全部言ってやる。俺の客だぞ。なのに、高木さん、高木さんって……」
「マスター。どいて。そこ俺の席」
私の背後に立った先輩がマスターを見下ろしている。
「どかねーよ。お前、マジでムカツク。俺の奈々ちゃんにまで手出して……」
そう言いながらマスターは立ち上がり、カウンターの中へと戻って行った。
「奈々。早くそれ食え。食ったらさっさと出ようぜ」
一口食べたガトーショコラは濃厚で、添えられている生クリームもオシャレな雰囲気。
「美味しいです」
「だろ?」
そう言った先輩の左頬が上がった。
「これ、先輩が?」
「マスターと一緒に。俺、料理得意なんだけど?」
「…知ってます」
一瞬、優しい目で見られて、また逸らされた。
「あの頃よりパワーアップしてるけど……」
「じゃあ、今度ご馳走してください」
弧を描いた切れ長の目が私に向けられ、その口元が嬉しそうに横に引かれた。
「あぁ」
「……」
そんな優しげな先輩の顔が直視できないで、ガトーショコラを頬張った。
「それ、バレンタインのプレゼント」
「え?」
先輩の突然の言葉に目を見開いた。
「明日だろ?」
「先輩から?」
「あぁ」
「え?私、何も用意してないですけど……」
「いらねーよ」
「俺もお返しはいらないよ。まぁどうしてもって言うなら、奈々ちゃんでいいよ」
マスターはどうしても話に入りたそうにしている。
「先輩。転職するんですか?」
「はは…それもいいな」
「そのエプロンは自前ですか?」
「そんな訳ないだろ。マスターに借りたんだよ」
「そうなんだよ。俺より似合ってるのがムカツクだろ?」
マスターがそう言いながら珈琲を置くと、私の隣りの席に座った。
「奈々ちゃん。こいつね、さっきまでウエイターやってたんだよ。客の女の子にキャーキャー言われてさ」
「マスター!余計なこと言うなよ」
「全部言ってやる。俺の客だぞ。なのに、高木さん、高木さんって……」
「マスター。どいて。そこ俺の席」
私の背後に立った先輩がマスターを見下ろしている。
「どかねーよ。お前、マジでムカツク。俺の奈々ちゃんにまで手出して……」
そう言いながらマスターは立ち上がり、カウンターの中へと戻って行った。
「奈々。早くそれ食え。食ったらさっさと出ようぜ」
一口食べたガトーショコラは濃厚で、添えられている生クリームもオシャレな雰囲気。
「美味しいです」
「だろ?」
そう言った先輩の左頬が上がった。
「これ、先輩が?」
「マスターと一緒に。俺、料理得意なんだけど?」
「…知ってます」
一瞬、優しい目で見られて、また逸らされた。
「あの頃よりパワーアップしてるけど……」
「じゃあ、今度ご馳走してください」
弧を描いた切れ長の目が私に向けられ、その口元が嬉しそうに横に引かれた。
「あぁ」
「……」
そんな優しげな先輩の顔が直視できないで、ガトーショコラを頬張った。
「それ、バレンタインのプレゼント」
「え?」
先輩の突然の言葉に目を見開いた。
「明日だろ?」
「先輩から?」
「あぁ」
「え?私、何も用意してないですけど……」
「いらねーよ」
「俺もお返しはいらないよ。まぁどうしてもって言うなら、奈々ちゃんでいいよ」
マスターはどうしても話に入りたそうにしている。