コクリバ 【完】
彼が出航してやっと一か月が過ぎた。

お盆の時期に早めに実家に戻ると、母は待ち構えていたようにいろいろ聞いてきた。

「高木君、素敵になったわねー。奈々にはもったいない人ね。もうプロポーズとかされたの?」
「……」
「え?されたの?」
「されてないよ」
「もしプロポーズされたらすぐに教えてね。いろいろ準備とか大変なのよ」
「されてないって」

そんな私と母との会話を、兄が隣でしっかり聞いている。

「俺に感謝しろよ。高木におまえのこと教えたの俺だからな」
「だからさ、お兄ちゃんは、個人情報とか知らないの?例え兄弟でも無闇に他人に教えちゃダメでしょ」
「他人じゃねーだろ。高木だろ?」
「う……お兄ちゃんは結婚しないの?」
「はぁ?今は俺の話じゃねーだろ」
「え?お兄ちゃん、そんな話があるの?」

母の目が輝いた。

「ないよ。おい、奈々!おまえ余計なこと言ってんじゃねーって。おい!」

そんな兄の焦った声を聞きながら、キッチンを後にした。
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