コクリバ 【完】
「その後の飲み会の席で、あの人、智さんに呼ばれて、なんか二人で話してたよ。おまえのことだろうとは思ったけど、俺は近付かなかった」
「うん」
「そしたらさ、オサムが呼ばれたんだよ。しょうがないから俺も近くに行ったら、あの人、嬉しそうにオサムに聞いてたよ。奈々は今、どうしてるって」
「……」

頬が熱くなる。

「オサムもバカだからさ、高木さんに話しかけられたのが嬉しくて、俺の嫁があいつの親友で……って話から、ずっとおまえのこと話してんの。あいつ、マジでムカツク」
「うん」
「だけど、絶対俺には聞いてこねーんだよ。どんだけ敵視されてんだよって思ったら、なんか意地悪したくなってさ。あいつはあなたのことを待ってます。だから行ってやってください。って上から目線で言ってやったんだよ」
「うん。それは聞いた」
「聞いた?」
「本人から、吉岡に言われたって……感謝してるっぽかったけど……」

嬉しそうに左頬を上げた先輩の顔が浮かんでくる。

「はぁ?そん時、俺の事めちゃめちゃ睨んでたんだぞ」
「え?」

「おまえが言うな、みたいな感じで……」

「……」

「だから、俺、分かった。俺があの人に苦しめられたと思ってたけど、あの人も俺に苦しんでたんだって……」

「吉岡……」

「張り合ったのがあの人で良かったって思う」

「……」

「もう揺れるなよ」

「……うん」

温かい物が胸の中いっぱいに広がっていく。
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