コクリバ 【完】
高木先輩に抱く感情とは違うけど、吉岡のことを大事だと思う気持ちは嘘じゃない。

あの日、あのコクリバで告白されていたら、私は間違いなく吉岡と普通に付き合っていた。
二人で絢香たちのように結婚の話もしていたかもしれない。

高木先輩に会うこともなく、こんなに長い間嫉妬に捕らわれることも無かったかもしれない。

そう思うと不思議な気がする。


しばらく思い出話に花を咲かせ、居酒屋を出た。
いいって言ってるのに、吉岡は送ってくれるらしい。

「おまえ、もう、高木さんの彼女なんだから、誰にでもキスさせるなよ」

「させてないよ」

「俺が智さん送って行ったときさせただろ。あれは勘違いさせるぞ」

「誰にでもはないよ。吉岡だからだよ」

「おまえ、俺に惚れてるだろ」

吉岡が笑いながら言う。

あの頃は身長がほとんど変わらなかったけど、今では見上げる位置にある吉岡の顔は、幼さがなくなり大人の顔になっている。

「気が付かなかったの?」

私も笑いながら答えた。
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