コクリバ 【完】
「なんか奈々先生イライラしてない?」

節分用の鬼のお面を用意しているとき、ビロンと延びたヒモを引っ張ったら、その上に積んであった箱をひっくり返してしまった。

中に入っていた鬼の目や鼻が、無残に床に散らばっている。


彼が出発してから、半年はとっくに過ぎた。

なのに、なんの連絡もない。

せめていつごろ帰るのか分かればそれなりに待てるのに、何の連絡もないんだったら帰ってくるのか帰ってこないのか、それすらも分からない。

彼だけ一人病気になって艦に乗れなかったとか、途中の寄港地で女ができたんじゃないかとか、考えなくていいことまで考えてしまう。

「もう。こんなとこに箱置いたの誰ですか!」

「……あんたでしょ」

真理子先生に呆れ顔で見られている。

「……」

「いつ帰ってくるか不安でイライラしてるの?」

「……」

「じゃ、今日は飲みに行こうか?」

「今日はまだ木曜ですよ」

「忘れてた……じゃ、夕飯行こう」

はかどらない作業は早々に切り上げて、真理子先生とロッカーに向かった。
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