ここで息をする
この息苦しさを経験していない航平くんには、きっと私が今どんな気持ちでいるのかなんて分からない。そう思ってしまうのに、理解しようとして寄り添うような優しさをくれるから、どうしようもなく嬉しくて……泣きたくなってしまった。
めちゃめちゃな心を誤魔化すように、航平くんの方を見ないまま静かにこくりと頷いて素っ気なく言う。
「……航平くんって時々、お兄ちゃんみたいなことするよね」
「えー、そうか? でも言われてみたらそうかもな。俺からすると波瑠は、友達兼幼馴染み兼、妹みたいなもんだし。無意識にそんな感じで接してるのかも」
「……嫌だなぁ、航平くんが兄だなんて」
「ちょ、何気に拒否られるとショックなんだけど……!」
「……冗談だよ。そんな本気で落ち込まないでよ」
私の言葉に青ざめている航平くんに苦笑する。
……本当に、分かってないよね航平くんは。幼少期から親しくしてきた友達が自分のことを家族同然に思ってくれていると知って、嫌だって思うわけないのに。
むしろそこまでの存在だと思ってもらうのは私にはもったいないぐらいで、1年前から避けてきたことへの罪悪感がますます募った。
「まじで冗談?」
「そうだよ。もー、そんなことで落ち込まないでよ!」
恐る恐る私の反応を見ている航平くんを励まそうと、頼りなく丸まっている背中をバシッと叩いた。
その衝撃に航平くんは驚いた顔で大袈裟なくらい痛がっていて、その間抜けな顔に私は声を出して笑う。航平くんも不服そうにしながら、何だかんだで笑っていた。
以前の仲の良い関係にすっかり戻ったような航平くんとのやりとりには、私はまだ少し戸惑ってしまう。だけど少しでも気を遣わせずに済むのなら、それで笑顔を見せてくれるのなら、私も以前のように笑っていようと思った。
ちゃんと、友達で幼馴染みの、航平くんが望む妹的存在として。