冷たい男



あっという間に5日は経つ。

金曜日だと言うのに、私はお泊まりを止めてホテルへとやって来た。

昨日のうちに洗濯物は片付け、あのマンションの部屋から私の気配は消えたであろう。

クローゼットの隅に隠したものを見なけば。

支配人に頼んで借りた部屋で、自宅マンションから持って来たワンピースへと着替える。

メイクをし、髪をハーフアップにする。

普段の巻き髪でもなくナチュラルメイクの私は、髪色はともかく、少しはお嬢様らしくなれただろう。

煙草を吸いながら、約束までの時間をボーッと潰す。

風岡はマメな性格ではない。

それ以前に電話番号しか知らず、メールをする事も出来ずに時間をやり過ごす。

もしもメアドを知ってたとしても、“今、何してる?”とかの連絡を取り合う事もないだろう。

あり得ないとわかってても、あり得ない事をわざわざ考えてるなんて、風岡が知ればつまらないと白い目を向けて来る筈。

けど、今日は金曜日。

あのマンションに帰ってたら、本当に何をしてただろう。

いつもなら食事を準備し、一緒に食べる。

別々にお風呂に入り、どちらともなくキスをし、それを合図に遅くまでを肌を重ね合わせる。

そして朝、私はシャワーを浴びてから自宅に帰ってた。

こんな日は、誰かに連絡して呼ぶのだろうか。

誰かとは、女性という事は確か。

金髪の人と黒髪の人、どちらかは風岡の本命なのだろうか。

私は、本命ではないのだから。
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