真夜中のアリス
それだけを言うと芋虫はくるりと背を向け何やらガチャガチャと音を立てながら手を動かしている。あたしの位置からではそれを覗き込むことは些か難点だ。
ふわりとまた湯気が立ち上る、それは香り高きダージリンのようだ。
「ほっほっほ。マッドハッターほどではないが、些か儂も紅茶には煩くてな、皆からは煙たがられとるわ。
さあアリス、これもお飲み。気力が蘇る筈じゃ」
手渡されたのは真新しい真っ白でいて繊細な薄さのティーカップ。例え絨毯の上でさえも落としたりしたら一瞬で砕けてしまいそうな。
丁寧に丁寧に、そして慎重に優しく。口付けて一口。風味豊かな薫りが口いっぱいに拡がり何
故かまた無性に泣きたくなる気持ちになる。
「これも美味しいよ、ありがとう芋虫。あたし色々考えてみる」