真夜中のアリス
「残念だけど、もうアリスはここにはいないみたいです。闇が魅せる幻想に取り憑かれて、彼方に迷い込んだみたいですね」
街の闇に想いを馳せるような視線と唇が淡々と状況を語る女王。ひとり青ざめ悲嘆に暮れるウサギ。彼の胸に広がるのは、絶望という暗く重い二文字。
「なんという事だ、やっと会えたというのに…。僕のせいだ、僕の判断ミスだ。ひとりになんてさせるべきじゃなかったんだ…」
がくりと肩を落としそんな言葉を溢し、ウサギの紅い瞳からは一筋の小さな結晶がぽつりと床にめがけて落下を見せる。
「彼女は彼との不本意な別れを経験し、深く心が傷付いて未だに癒せていないんだ。心の傷が深いほど闇に取り込まれやすい。解っていたはずなのに…」