真夜中のアリス
「ってウサギ、またいないし!」
辺りをキョロキョロ見渡すも、高鳴る音楽と薫る草花だけで動物の姿なんてどこにも見受けられなかった。
「…こんな格好までして、出てきたって言うのに…!」
普段のあたしなら絶対にしないこんな格好。だからこそ恥ずかしくて、それが苛々に変わり紛らわすために地団場を踏んで怒りを表していたら、遠くの方にきらりと光る大きな物体。近づいて眺めてみる。
「…鍵? なんでこんなところに…」
よく見てみるとそれは金色が少しくすんでしまっていた、(元の身長から見れば)小さな鍵。
「なんだろ…あっ!いた!」
何もいなかった筈の正面の景色には、逃げた筈の白いウサギ。…さっきよりも大きく見えるのは仕様なのだろうか。けれどウサギは何故かその場から動かないでじっとこちらの様子を伺っている。