【続】興味があるなら恋をしよう
一人でやけ酒をあおるのとは違う。
静かだった。
思えば、移動する前で話は済んでいた気もする。
そのまま別れて帰るには、何となく鎮める時間が欲しかっただけかも知れない。
それは俺も課長も同じ感じだろうと思った。
課長のマンション。
良い環境の中にあるようで、日曜の夕暮れ時という事もあり静かだった。
一瞬、建物を仰いだ。
ここのどこかに藍原が居て、晩御飯の支度とかしてるんだと思った。
今、車を置きに来て、俺も課長も駐車場に居るなんて思いもしないのだろう。
課長はそれ程飲んでいる感じでも無い。
男が二人、カウンターで並んで静かに飲んでいる。
知らない者同士のように、席をとばして座っている方が、もっとしっくりくるような気がした。
「ずっと好きだったって言うなら、何でもっと早く言って来なかったんだろうな…」
課長が呟いた。
アルコールに弱いと言うのは本当だと思った。
口に出し辛い事を呟くのは、少し酔ったせいだと思った。
「勇気が無かったんじゃないですか?
課長は、…その容姿ですから、彼女が当然居るものだと思い込んだのかも知れない。
…藍原は思い込んで決め付けるところがありますから」
「ああ…本当に…参るよ。勝手に俺が結婚すると思っていたし、子供も居ると思ってた。
自分で思い込んで、俺の話も中々聞こうとしてくれないし…。もっと早い内に…何もかも…全ての誤解を解いておくべきだった。お互いに。
タイミングが良くない…」
坂本が転勤して来るまでに、藍原の噂の恋人の件、もっと早く思い当たって、話しておくべきだった。無頓着過ぎた。
周りの奴は知っていたっていうのに。
藍原がそんな噂に囚われていたとは知らなかった。
元はと言えば俺のせいなんだが。
「藍原に会えた事、俺は運命に引き寄せられたと思っています」