きみのためのプレゼント

私の言葉に目の前の彼は言葉を失い、大きく目見開いている。と思ったら、突然、大爆笑。今度は私が目を点にした。今の笑うところ?そして、次は私がムッとする。



「ごめん、ごめん。正直に言っていい?今、俺めちゃくちゃ嬉しくて、藤野さんのこと抱きしめたい」


「はぁ?何よ、それ。ふざけないで!」


「ふざけてないし、本気。でも、どうせもうすぐ、抱きしめるけどね」


口を膨らませて怒る私に、「可愛いな」と言って宥める彼。でも、不思議とこの繋がれた手はお互い離すことはなかった。


「ちょっと、普通に車椅子に降ろしてよ。回ったら危ない!」


観覧車が地上に降りてきて、ドアが開くと待ってましたと藤本くんは、私を抱え上げ、下りたと思ったらそのままクルクルと回り始めた。前も一度あった。


あの時は、戸惑いや恥ずかしい気持ちが強かったけれど、今はそれよりも照れくさいけれどやっぱり嬉しい。


「やっぱり、話したい。今のこの俺の嬉しい気持ちのまま、笑顔の理由、光の話をさせてほしい。それと、光は、『さん』じゃなくて『くん』だよ」
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