きみのためのプレゼント
きみの大切な人
話を聞いてほしいと言った藤本くんは、私の携帯からお母さんに連絡を取った。お母さんからもらった時間は一時間。

花火大会の観客はみんな帰り道を歩くのに、私たちだけがベンチに逆戻り。



「よし、じゃあ時間も限られているし、さっそく話そうか」



車椅子からふわりとベンチに降ろされた。優しく微笑んだ藤本くんは距離をあけないようにピタリと私の隣。


夏の夜は、かなり蒸し暑いけれどくっついていたいと思うのは、私だけじゃないってことかな?



「藤野さんは何が一番知りたい?俺の笑顔の理由?それとも、光のことかな?」



前園光が、男の子だと知ってからの安堵感。最初は聞きたくなかった話も今はかなり知りたい。笑顔の理由も、光くんのことも。藤本くんのことは一番知りたい。知っていたい。


私が藤本くんを一番の理解者だと思っているように、彼にも私が彼の理解者だと思ってもらいたい。



「どっちも知りたい。藤本くんのことなら」



「すごい殺し文句だね、それ。わかった。じゃあ、光の話をしようか」
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